小島一文のG1フィッシング。島根、鳥取両県を中心に活躍中。釣(つり)情報を掲載。

強い西風、潮は逆

悪条件を克服して釣った51cmのチヌ・・・・・GWに海士のようのきで

 ゴールデンウイーク後半、三日、四日の日程で隠岐島前へチヌ釣り釣行した。四月の中旬にも訪れたが、この時は仕事の関係でとんぼ返りしたので、実質、今シーズン初めての釣行となった。 いろいろな釣りをし、時には九州や四国方面まで遠征することも多いが、その中でも隠岐島前の特に水道筋のチヌ釣りは、私がもっとも好きな釣りのひとつだ。男女群島などの離島に尾長グレを狙いに行くに等しい魅力を感じるものである。
 その魅力はなんといってもチヌに刺し餌を喰わすまでのかけひききである。島前の内海はほかのどこにもない独特な自然条件と雰囲気がある、その自然条件をいかに克服してチヌを攻略するかが釣果の鍵を握る。そして池のような静かな海面からは想像もつかないパワフルなチヌの引きが、また、たまらないのである。そして、キジやウグイスの鳴き声とほのかな波音をBGMに、のんびりした気分で竿を出せるのも魅力のひとつだろうか。

 三日午前四時、私は友人と二人で七類港まで迎えに来たチャーター船「ふたまた丸」に乗り込んだ。所要時間は約一時間三十分。最初に団体客をおろして、私たちは中ノ島の日ノ津港と松ヶ崎灯台のちょうど中間付近に位置する「ようのき」という磯にあがった。この付近は去年まで養殖筏があり船が入り込むことが出来なかった場所だが、養殖業者が倒産して網を引き揚げたため渡礁が可能となった。今回は磯泊まりをして二日間とも「ようのき」を攻めた。

 二人の二日間の釣果は、私が四十四㌢~五十一㌢のチヌ七匹と五十㌢のマダイ一匹。友人が三十五㌢~四十八㌢のチヌ七匹を釣った。初日は潮が動かず苦戦したが、二人でチヌ四匹とマダイ一匹、二日目の半日は西風が強くなったもののチヌ十匹を仕留めた。

 「ようのき」の先端から「黒崎」に向いては、他の釣り人が竿を出していたので、私たちは北向きに釣り座をとった。船付け付近は小高くなっていて足場をとりやすい。一帯の海岸線は竿一本分くらい海藻が覆い茂っているが、ポイント図A付近は、海藻と海藻の切れ目となっていて、明らかにチヌのポイントであることを想像させる。海藻の付き具合から判断すると両サイドが棚になっていてしかもその沖は急激な駆け上がりになっていることがわかる。海藻の切れ目の底は深く切れ込んでいて、撒き餌が滞留しやすくチヌの絶好のヒットポイントになる。
 もう一つ見逃してならないのが、ポイント図B付近。釣り場に立つと釣り人の心理で、どうしても出鼻や磯の角を取りたくなるものだが、隠岐島前の内海に関してはこのようなワンド向きに実績があることが多い。こういう地形は自分の足場を含めて三方が磯で囲まれている。図を見てもらえばわかるように三方方向から駆け上がりになっていてその落ち込み付近の三角点はすり鉢状に落ち込んでいることが多い。この場合どの方向に潮が流れる条件でもいったん撒き餌が滞留しやすい場所となる。
 また、同じ駆け上がりでも一方は砂地、もう一方はゴロタ石、もう一方は海藻が茂った岩礁になっているなど変化に富んだ地形になっていることが多い。こんなところはチヌの生息条件にぴったりだ。中之島側の内海筋はほかにも同じような地形が多く、「堤鼻」「堤ウラ」「奥座敷」「須賀鼻」「メボシ」「シイノキ島」などへ渡礁したら、ワンドの奥の方も攻めてみよう。

 仕掛けは図の通りであるが、隠岐では大型を想定してハリスを1.7号~2.0号を使用する。ハリは、糸を太くするとアブミ系では軸が細すぎてバランスが悪いので、がまかつのふかせチヌ4号あたりを使用する。 撒き餌は、半日の量として生オキアミ6キロと集魚剤にマルキューのオカラだんご2袋、チヌパワー1袋を混ぜた。
 友人がAポイント、私はBポイントに入って釣りはじめた。私はウキ下5ヒロにセットして、Bポイントの落ち込み付近に投入した。潮がほとんど動いていないので、投入した仕掛けが道糸の重みですぐに手前に戻ってきて、海藻に引っかかってしまう。 そこで狙うポイントよりもさらに5㍍ほど遠投した。付け餌は、沖からジワジワッとハリスを張った状態でなじますイメージだ。撒き餌は、ほぼ真下に沈むことを想定して狙うポイントに直接打ち込んだ。仕掛けがポイントになじんだ頃にもう一度、三、四杯の撒き餌を打ってアタリを待つ。5ヒロのウキ下設定は約1ヒロくらいを海底にはわすイメージだ。
 なかなか本命のアタリがなかったが、午前十時頃にようやく45㌢のチヌがヒットした。その後も同じBポイントの落ち込みを丹念に攻めるが潮が動かず苦戦。そこでウキ下を6ヒロに深くし、20㍍ほど遠投して、沖の深みを狙ってみたところすぐにヒット。何度か藻の中に突っ込もうとするのを耐えて、取り込んだのは50㌢のマダイだった。結局この日は私が同サイズのチヌを1匹追加。友人も例のAポイントの切れ込み付近でチヌを2匹釣った。

 次の日は西風が吹いた。今度は私がAポイントに入った。潮がワンドから沖に流れる横潮で風と反対方向に流れている。意外にも島前の内海ではこんな状況が一番釣りやすい。道糸をほどよく膨らませて風や波で引っ張らせると自然と仕掛けに張りが出来て付け餌を先行させやすい。それに風と潮がぶつかり合って岸から仕掛けを押し離してくれるので、撒き餌の筋に付け餌を長らくキープできる。この日は朝からこの状態が続いてぽつぽつアタリがあり釣果を伸ばした。 午前十時頃からだんだん西風が強くなってきた。時折突風が吹いて体が揺らされるほどだ。今度は潮の流れる強さよりも風が強すぎて仕掛けが潮上へ押し戻されるようになった。そこでウキの浮力と同じ付加になるようにガン玉を追加して、仕掛けがなじむとゆっくりウキが沈んで行くように設定した。このときのウキ下は四ヒロ半。なじむまでは風に押し戻されるが、だんだんなじんで沈みだすと愛用の竹下ウキは的確に潮をとらえた。午前十時三十分。海中にぼやっと漂うウキがスーと視界から消えた。膨らませていた道糸がスルスルッと走て手元にズシと重みが伝わってきた。これが今回最長寸の五十一㌢のチヌであった。

 私は今回の釣行でひとつ試していたことがあった。それは刺し餌にオキアミボイルを使うということ。一般的にオキアミボイルよりも生オキアミの方が魚の喰いがよいとされているが本当にそうなのだろうか。確かに新鮮で身のきれいな柔らかい生の方が喰いがいいように思うが、それは魚種と海の状況や場所などで違うのではないだろうか。
 チヌは、海底に付着している貝やカニなどを主食としていることが多いが、現に釣ったチヌの腹を割ってみると胃袋からは貝殻がたくさん出るものだ。本やビデオでチヌがイガイ(カラスガイ)を丸ごとほおばり殻をかみ砕いて食べているのを見たことがある。このような強固な歯とあごを持つチヌにとってはオキアミボイルの堅さなど、なんともないのではないかと想像する。それだったらボイルが持つ利点を利用してみよう。

  1. エサ取りに強い。
  2. 遠投しても針からはずれにくい。
  3. 腐りにくい。
  4. 海中で目立つ。などがあげられる。

 それともうひとつ、オキアミ生とボイルの特徴を利用してエサ取りを交わす方法を紹介しよう。

  まず撒き餌は、今回のようにオキアミ生と集魚剤だけを混ぜる。オキアミはなるべくつぶさないように原形のままがよい。この撒き餌を撒きながら付け餌にはオキアミボイルを使用するのである。ボイルは別のバッカンに海水で浸しておき、たまに少量を粒のままパラパラと撒いてやる程度でよい。撒き餌にボイルを一緒に混ぜないのは、集魚剤がボイルの水分を吸収するため、撒いても浮いてしまってチヌの棚まで届かない。サイズはLかLLの大きめがよい。今回はLLを使用した。
 エサ取りの小魚は、チヌのように強固な歯やあごを持っていないため、囓る、吸うなどの力が非常に弱い。このようなエサ取りは、まず身の柔らかいオキアミ生を喰ってくる。エサ取りをオキアミ生に釘付けにしておいて、付け餌のオキアミボイルをチヌの棚まで届けるというわけである。
 今回の最長寸となった51㌢のチヌは、強風を釣りこなした仕掛け設定と、オキアミ生が何度か続けてエサ取りにとられたのを見切って、すかさずオキアミボイルに変えてヒットさせた「G1」な1匹であった。

 帰ってチヌの腹を割ってみると胃袋からはボイルと集魚剤に入っている押し麦が大部分を占めていた。撒き餌に使ったオキアミ生の量の比率から考えても、刺し餌を含めてオキアミボイルの比率はかなり少量のはずだ。なのにこれだけ食べていると言うことはむしろボイルを選んで食べていたとも推測できる。それとエサ取りは生を集中的に喰っているということも実証できた。この結果は今後の釣行に様々な場面で応用できそうである。ともあれ本当のところはボイルがうまいか、生がうまいかはチヌに聞いてみなければ分からないが、自分が設定した棚に刺し餌がどのような状態で流れているのかを、イメージしておくことは大切なことである。オキアミ生がいくらいいといっても棚に到達するまでに、エサ取りにぼろぼろに食いちぎられハリがむき出しになり、かすかに身が付いているだけの状態よりも、きちんと付けたままの状態のオキアミボイルの方が分がありそうだ。

 このようにそれぞれの特長をよく理解した上で、使い分け、使いこなしをすればいい。一番怖いのは「これが絶対である」とか「これしかだめだ」という決め付けと固定観念を持つことである。こうしてしまうと釣りの幅がすごく狭いものになってしまうのである。

釣行日 平成九年五月三日・四日
釣り場 隠岐群海士町「しだがさき」
天気 くもりー雨ー晴れ
南東から西の風強い
波高 O.五~一.五m
水温 十四.五
撒き餌 半日 生オキアミ 六キロ
マルキュー・オカラだんご2・チヌパワー1
オキアミボイル
刺し餌 オキアミボイル
竿 がま磯 競技チヌ 1号5.0
リール リョービ:メタロイヤルvs1500
道糸 東レ:ふかせ釣り2号
ハリス 東レ:スーパーL 1.7号~2.0号 3ヒロ
ハリ がまかつ:ふかせチヌ4号
ウキ 竹下ウキ
ウキ下 4ヒロ~6ヒロ