小島一文のG1フィッシング。島根、鳥取両県を中心に活躍中。釣(つり)情報を掲載。

隠岐の日帰り釣行満足度100パーセント!

隠岐釣行

苦肉の策で隠岐日帰り旅行

 隠岐釣行がグッと身近になった。隠岐の釣りといえば、まずフェリーで渡って各港から渡船で磯に渡り、磯泊まりもしくは民宿泊まりの1泊2日が通常の行程である。最低でも丸2日間の休暇が必要だ。この行程では早くても磯で竿を出せるのは午後からで、納竿も次の日の正午には迎えの渡船を待つことになる。全行程2日間を要する割には釣る時間が短く効率が悪い。それが近年の渡船の高速・大型化によって隠岐日帰り釣行が可能になった。本土まで迎えにきてくれるいわゆるチャーター船を利用する。朝マズメから午後の3時まで8時間から9時間、魚影の濃い隠岐で釣りが出きるのだから、家庭もちのサラリーマン釣り師にはありがたい。チャーター船となれば荷物の積み降ろしが港と磯を直接なのでフェリーを利用するよりはるかに楽なのもよい。今までどおり1泊する場合でも2日間じっくり竿が出せる。
 こういった釣り人のニーズに応えて、隠岐の渡船業者は次々と高速・大型船を新造した。海の穏やかな週末ともなれば七類の港には隠岐からたくさんの渡船が岸壁に列ぶ。早朝にたくさんの釣り人たちが集まり船に荷物を積み込むその光景は、九州や四国の渡船基地を思わせるようである。

 七類-隠岐のチャーター船は、まだ各業者間によってシステムがまちまちなので一概には言えないが、七類-隠岐の所要時間は約1時間30分、片道料金は5,000円が相場のようである。この料金に通常の現地での渡船料が加算される。私が今までに利用していたのは、早朝七類を出発するチャーター船でそのまま磯に渡り、1泊して次の日のフェリー、又はチャーター船で帰るパターンがほとんどであったが、今シーズン、はじめて日帰りパターンを試してみた。本当は1泊2日でゆっくり竿を出したいのだが、仕事が休みの日でも地域や子どもの行事などで何かと忙しく、2日連続フリーの時間がとれないというわけで苦肉の策である。私が所属するクラブの中にも同じような状況で隠岐に行きたくても行けないメンバーが多い。
 6月26日、午前3時、ふたまた丸で七類港を出発して、私は同クラブのメンバー3人と大森島の「北の鼻」西側無名磯に渡礁した。この日のチャーター船は私たちのグループ5人を含めて15人ほど。日帰りは私たちだけで、あとの釣り人は磯泊まりの装備である。狙いはグレ一本。夜明けと同時に釣りはじめて、今回は、海士港からのフェリーで帰る行程のため納竿は午後2時とした。この行程でも9時間釣りが出きるわけで、集中して釣るにはちょうどよい時間である。この日の私の釣果は、20㎝前後のコッパグレ、餌取りのムロアジやタカベをかわして25㎝から35㎝のグレをふた桁釣り、ほかのメンバーたちもほとんど休憩なしで集中して釣り、ほぼ同じような釣果を上げた。同行した曽田直樹さん(松江市)は「こんなパターンで隠岐釣行できるとは思わなかった。短時間でも集中した釣りができる。やっぱ隠岐の魚影はすごい」と大満足。

 この結果に気をよくした私たちは、今度は7月10日にクラブの隠岐日帰り釣り大会を計画した。集まったのはクラブ外のゲストを含めて15人。今回お世話になった渡船は豊田の浜吉丸(さきの)で、船長と交渉した結果、日帰り往復チャーターOK。日程は午前0時出港、午後3時納竿。料金は往復チャーター料、渡船料込みで12,000円で引き受けてもらった。経費については1日の釣りとしては決して安くはないが、七類から隠岐までの距離、渡船の範囲などを考えると妥当なところではないかと思う。これで高いか安いかは人それぞれであるが、魚影の濃い隠岐釣行の場合、また、忙しくて日程がとれない釣り人にとっては魅力的なプランだと思う。後は、釣り人のニーズに合わせて、渡船業者側が釣具店などと提携してPRし、団体でなくても乗り合いで人数を確保し、料金についても人数や渡船範囲などによって割引サービスするなど、システム作りが課題ではなかろうかと思う。
 さて、この日は「冠島」から「ふたご岩」の磯に分かれて渡礁し、釣果は場所によってむらがあったが、それでも午前3時から午後3時まで約12時間竿お出し、それぞれ思い思いの釣りができたようである。なんと言っても魅力があるのは、日帰りでありながら夜釣りができたこと。朝マヅメのゴールデンタイムには十分エサが利いてじっくり攻められるのである。私は「ふたご岩」周辺の無名磯に渡礁して朝マズメのまだ暗いうちに43㎝のグレをゲット。続いて強烈なアタリがあったが瀬ズレで道糸がプッツン。手応えから大型のマダイであったにちがいない。その後はグレのアタリがコンスタントにあり、30㎝オーバーをこれもふた桁釣り上げることができた。

 今回2回の釣行を振り返ってみると良型のグレは以外とタナが深いことに気がつく。30㎝を越すグレのアタリは浅いときでも3ヒロ前後。だいたい4ヒロから時には底近くで喰ってくることも多かった。コッパグレや餌取りのムロアジ、タカベをかわしてキープサイズをゲットするには、それなりのエサの撒き方や仕掛け設定、仕掛けの投入点など段階的に展開していかなくてはならない。
 まず撒き餌であるが、最初からサラシや潮筋に撒いていたのではせっかくの磯が台無しになるので注意が必要だ。最初は磯際に静かに撒きたい。特に暗いうちは潮やサラシがどの方向に流れているかわかりにくいので足下の磯の上に撒き、波の上げ下げで吸い込まれて流れるのがよい。そして私の場合は、最初から集魚剤を混ぜるのではなくオキアミの粒だけを撒いて様子を見る。餌取りの種類や数を確認するためである。その後は状況に応じて集魚剤を加えいろいろなパターンで展開していくのであるが、餌取りが多い状況では一点集中の方がよい結果が得られるようである。
 仕掛けは、まず磯際狙いに設定する。今回の「ふたご島」ではウキ下5ヒロの磯際狙いで43㎝のグレと大型魚のバラシに遭遇した。夜が明けて足下の撒き餌の中に餌取りがちらちら出だすと徐々に徐々に狙いを沖に展開していく。沖に展開するだけではなく一点集中して撒いている撒き餌を中心として可能な限りあらゆる角度から攻めてみるとよい。意外なところに大型が潜んでいることがある。
 撒き餌が拡がって餌取りのエリアも拡がっていくと、海面からのセオリーどおりの釣りが通用しなくなってくる。そこで私は奥の手としてマイナス浮力の竹下ウキをセット。思いっきり遠投して撒き餌の外のエリアでいったん仕掛けを沈めておいてからジワジワと撒き餌のエリアまで引き戻す釣りに切り替えた。このウキはある程度まで沈むと比重がゼロになるように設定してあるので、道糸の操作によってイメージしたタナで付け餌を漂わせながらキープすることができる。結局6月、7月の日帰り隠岐釣行で30㎝以上のグレが一番多くヒットしたのは、この釣り方だった。良型グレは、いない、釣れないとあきらめないで、多角的な釣りイメージで想像力豊かな釣りを展開してみよう。